久米靖

2021.08.27

不滅の名作アーカイブ・海外ドラマ編② 『刑事コロンポ』(1972年)

みなさん、おはようございます!
Cast Poser Next所属の久米靖です。

今日8月27日は、不朽の名作『刑事コロンボ』が日本で初めて放送された日。
1972年のことです。

前半でまず犯行を描き、後半でその犯人が探偵役に捕まるまでを描く「倒叙形式」で制作されたドラマで、50年を経た今でもその魅力は衰えず、頻繁に再放送がされています。
1本1本がまるで創り込まれた映画のような質の高い作品なのです。

日本でもこれを参考にしたドラマは多くあります。
特に、三谷幸喜監督が『刑事コロンボ』の大ファンで、その形式をそっくり踏襲して田村正和さん主演のドラマ『古畑任三郎』の脚本を執筆されたのは有名な話ですね。

このドラマが大ヒットした要因はミステリとしての完成度の高さもさることながら、何と言ってもピーター・フォーク氏演じるコロンボ警部のキャラクターにあると言えます。

ヨレヨレのレインコートを着、一見うだつの上がらない風体のコロンボをピーター・フォーク氏は素晴らしい存在感で演じ抜き、「後半は魅力的な名探偵による本格謎解き」とでも言うべき空前の特徴をつけ加えたのです。

犯人役を名の知れたスターが演じているのもストーリーに深みを持たせています。

また、日本版が大ヒットした理由として、さらに2つの卓越した才能の登場があります。

1つ目は、日本語版台本を担当された額田やえ子氏の卓抜な言語センス。
日本語版コロンボの名ゼリフの数々は、額田氏によって産み出されたのです。

例えば、英語の原文では「My wife」となっているのを「うちのカミさんがネ」としたり、犯人に対する呼称が英語では全部「You」なのに、コロンボが犯人を追い詰める段になると「あなた」→「あんた」と変化するのです。

2つ目は、日本語版でコロンボの声を吹き替えた俳優・小池朝雄氏の名演。
小池氏は地声とは違う声で、日本人好みの柔らかいコロンボの声を創り出したのです。

コロンボの放送が開始されてしばらく経った頃、視聴者からピーター・フォーク氏の声を聴きたいというリクエストが多く寄せられたそうです。
そこで放送をしていたNHKはその要望に応え、次回の予告編を原語で流しました。

ところが実は、ピーター・フォーク氏の声は甲高いしゃがれ声。視聴者は一瞬にして拒否反応を示し、以降小池氏の声=コロンボの声は不動のものとなりました。
小池氏が完全にピーター・フォーク氏の声を乗っ取ったのです。

さて、『刑事コロンボ』には旧シリーズ・45作品と、新シリーズ・24作品がありますが、圧倒的に面白くクオリティも高いのは旧シリーズの方。
若き日のスティーブン・スピルバーグ氏が監督した作品もあります。

ここで、独断でボクなりのベスト5を選んでみました(本当はベスト3くらいがいいのでしょうが、素晴らしい作品が多すぎて絞り切れません)。

■第5位『殺しの序曲』
知能指数がトップ2%という天才だけで構成されているクラブの会員・オリヴァーが、その頭脳をフルに使って目論む完全犯罪。
オリヴァーにとってコロンボとの出会いは、生まれて初めて自分を上回る知性を持った者との出会いでした。
クライマックスでは天才vs天才の息詰まるバトルが展開され、犯人がその天才性ゆえに敗れるという見事な結末を迎えます。

■第4位『二枚のドガの絵』
シリーズ最高のサプライズエンディングが楽しめる一作です。
なんと、ドラマの最後の数秒で事件が解決し、その瞬間にエンドロールが流れるという鮮やかな幕切れが印象的です。

■第3位『忘れられたスター』
ヒッチコック監督の出世作『サイコ』の前半、シャワー室で惨殺されるヒロインを演じたジャネット・リー氏が犯人役。
ひと昔前にスターだったジャネット・リー氏が、やはりスターの座に帰り咲こうとするヒロインを演じるという二重構造になっています。
周到に張られた伏線と、あまりにももの哀しいラストが印象的な傑作です。

 

■第2位『5時30分の目撃者』
犯行現場の唯一の目撃者は、目が見えなかった! 
犯人が分かっていながら立証するすべを持たないコロンボは、最後に大逆転トリックを仕掛けます。
視聴者も騙され、その快感に酔いしれることのできる名シーンの多い作品です。

 
■第1位『権力の墓穴』
犯人はコロンボの上司で、ロサンゼルス市警の副本部長。大胆かつ緻密な構成で、視聴者を唸らせてくれた傑作です。
大胆不敵な計画で妻を殺害した上司に対し、コロンボはプロの窃盗犯と組んで最後の最後に逆トリックを仕掛けます。
「副本部長、あなたが奥さん殺したんです・・・」。
トリックを仕掛けた場所での息詰まる対決の数分間は屈指の名場面で、何度も観返したほどでした。

他にも、『逆転の構図』『溶ける糸』『祝砲の挽歌』『歌声の消えた海』などなど、傑作が目白押し。

未見の方は、ぜひ一度ご覧ください。

オーディション応募フォームへ