岩本和敏
2022.05.21
劇団鉄骨ボレロ第9回『破滅的インパルス』
キャストパワーネクスト所属、岩本和敏(イワモトカヅトシ)といいます。
前職は数学教師。
現職は鳶(とび)職をしながら人生修行中。
趣味は読書とウーバー配達です。
ブログ初投稿で乱文になりますが、ご笑覧いただければ幸いです。
このキャストパワーネクストに所属させてもらったのは、小さい時から演劇に興味があったから。
ホントは興味があるのに、それに触れずに生きていく。
そんなことが多くの人にあるように思います。
僕もそうだったわけです。
僕は「教員を辞めてせっかくチャンスができたのだから何かやりたかったことをやってみよう」と最初に思いついたのが演劇でした。
幸いにもキャストパワーネクストに所属させていただいて、今までに2回ほど演劇に参加させてもらいました。
2021年8月には、airstudioプロデュース公演『OVERTIME』。
2022年4月には、劇団鉄骨ボレロ第9回公演『破滅的インパルス』。
子どものときから演劇に興味があった理由を考えました。
僕を含めて、人に対して「なんとなく遠慮してしまう」「なんとなく窮屈さを感じる」「なんとなく表現しきれていないような気がする」そう感じる人は多いように思います。
決して人が嫌いなわけではないけど、なんか窮屈なものがある。
多分、「常識」という枠組みを過剰に意識しすぎてしまうからなのかな。
(もちろん、常識という枠組みがあるからうまく物事は進むのですが。)
しかし、演劇であれば、別の世界の別の人という設定を借りることで、その枠組みを壊せる。
その世界のその人として、動き、声を出し、人と関わることができる。
思いっきりできる。
100%でできる。
そう思ったのでしょう。
舞台上ではその世界のその人として100%で生きることができる。
そんな予感を子どものときから感じていたのだろうと思います。
あれ?
なんか思春期みたいかな?
まぁいいですね。
だって真実だと思いますから。
得てして、思春期のころの感性は真実を言い当てているものだと思っています。
それはさておき。
で、今回2度の演劇を経験させてもらって、果たしてその通りでした。
本当にその通りでした。
心から楽しかった。
本当はもっとやりたい。
ここでは記憶に新しいので、劇団鉄骨ボレロ公演『破滅的インパルス』について書きたいと思います。
オーディションは2月5日。
主宰の渡邉晋さんに初めてお会いした日ということになります。
印象的だったのが、台本の演技審査を2回していただいたこと。
そして2度目はどの役をやりたいかを話し合った上でやらせてもらったこと。
このことが僕にとっては、良かったと思います。
もちろん一発勝負で力を発揮することも必要なスキルでしょうけど、人には向き不向きがあるものです。
そして僕は一瞬の瞬発力よりも、多少の時間をかけて状況を理解し、必要なものを理解し、納得感とともに力を発揮する、そんなやり方が向いているタイプと自分では思いました。
2度目の審査では最も『ワチャワチャ』したキャラの『千葉』という役を選ばせてもらいました。
こういう勢いのあるキャラはやっていて楽しく、半ばオーディションということを忘れて演技をさせてもらった。
結果めでたく合格をいただ来ました。
時間をかけてじっくりと見ていただいたというのが、このオーディションの印象で、その後約2ヶ月続いた稽古の印象と同じでした。
2月12日から顔合わせ&稽古がスタート。
稽古期間の前半は、台本以外の稽古が中心だったように思います。
様々な芝居におけるトレーニングを具体的に知れたことは有益でした。
たくさんのトレーニングを経験したが、印象的だったものについて、2つほど書きたいと思います。
1つは『エチュード』。
要は台本なしの即興劇です。
状況やテーマだけ与えられて、即興の劇をします。
これが思いのほか楽しかった。
いや、正直にいうと初めは緊張するというか、どうなるかわからない不安のようなものがあって、なかなか喋れず動けなかったと思います。
しかし慣れてくるにつけ、自分の発した言葉や動きが、うまくマッチして場を面白そうな方向に動かしていく時には、ドーパミンが出るのを感じました。
何より、失敗を恐れない前向きな雰囲気をチーム全体が持っていたのが大きかった。
「悩まない!!」
このフレーズは、稽古期間中に渡邉晋さんから何度も聞くことになります。
やるならやる、やりきる。
舞台上では最重要のマインドセット。
しかし、そのマインドを支えるのは、仲間への信頼があればこそ。
「この場ならやれる」という安心感と、それを担保してくれる仲間があればこそだと思います。
個人的に、「アドリブ」に弱く瞬発力や度胸のようなものが課題と思っていましたが、今回の公演と稽古を通じて、改善の糸口を見つけられたように思っています。
印象的だった稽古の2つ目は、エチュードの発展版です。
内容は同じ即興劇ですが、事前にくじ引きによってメンバーに1番から順にランクをつけます。
そのランクは劇中における人物の「立場の上下」を表していて、自分以外のランクはわからない。
共演者のランクを探りながら、自分のランクに則りながら、即興劇を演じる、というものです。
これもまた最高に面白いと思いました。
共演者の言動をいつも以上に観察するようになります。
「なぜそう言ったのか」「なぜそう動いたのか」常に考えるようになります。
また自分のランクを共演者に伝わるようにするにはどう行動すべきか考えるようになります。
要はいつも以上に『相手のことを考える』ようになるのです。
完全に余談ですが、私はこの稽古を別の視点から見て、非常に優秀ではないかと思っています。
それは小学校や中学校での道徳教育の一環として、コミュニケーション能力を育むプログラムとして使えるのではないか、ということです。
『相手のことを考える』ためのロールプレイとしては、ゲーム性にも富んでいるので最適だな、と今でも思っています。
小学生や中学生でもやりやすいように、ある程度のルールを整備すれば売れるとさえ思うので、仕事に困ったら開発に着手しようと思います。
ともあれ。
「芝居そのもの」のトレーニングというのが、これだけ具体的に数あるのだ、というのが発見でした。
ありがたく思っています。
稽古期間の中盤となる3月からは、台本メインの稽古になっていきました。
今回いただいた役は『テロを企てそうな美大8年生の沼原先輩』という役で、かなり奇抜で飛び抜けた役でした。
思いっきり突き抜ける必要のある役でした。
そして、結論としては『沼原先輩』らしく突き抜けた人物になれたと思っています。
それができたのは、長期間の稽古と、丁寧な演出と、共演者のおかげです。
中でも今回は特に『共演者の方々から受ける影響』というものの大きさを知りました。
影響を受けることによって、自分でも「こんなに変わっていくものなのか」と驚きました。
共演者の方々が毎回色々なアプローチで演じる。
その度に「そうか、そんな方法もありなのか」とか「そうか、そこまでできるのか」などと、自分の中で無意識に決めていた「限度」のようなものを自覚させてもらうと同時に、稽古のたびにその「限度」を壊していくことができたように思います。
そして皆テンションが高いところで、お互いに噛み合った演技をする。
すると突き抜けている『沼原先輩』としては、絶対に負けるわけにはいかない。
毎回、そんな思いで稽古した結果、本番までには自分でも納得のいく『沼原先輩』になることができました。
今回、メンバーのチームワークは非常に良かったと感じています。
それは、このようにお互いにいい影響を与えていたことが理由の一つと思います。
本番は2日間だけの公演です。
ゲネの時から「終わってしまうのが寂しい」とメンバーがお互いに言葉にするほど、すでにチームワークができており、お互い信頼関係を築けた中で稽古をしてきました。
本番では、スタッフの方々、そしてお客さまのおかげで、本当に楽しく良い舞台ができたと思っています。
お客さまもとても楽しんでくださったようで、非常に好評だったようです。
1つ、今回学んだなと思うことを最後に書きます。
舞台上での「役割」についてです。
本公演はコメディです。
演者としては、お客さまの「笑いの有無」が何よりもの関心事になるものです。
自分の一挙手一投足が、ちょっとしたタイミングやイントネーションの違いで、反応があったりなかったりします。
ですのでそこに強い意識が向きがちで、ウケがあれば成功、ウケがなければ失敗、という考えになりがちです。
もちろんウケれば、それに越したことはないのですが、チームで作る演劇では必ずしも自分の言動がウケなければいけないというわけではないということに気づきました。
まず、コメディ演劇で笑いが起こりやすい場面は何かというと「登場人物同士のやりとり」にあると思いました。
ともすると「奇抜な言動」にこそ、笑いが起こると思いがちですが、必ずしもそうではない。
舞台上の“非日常的”な世界において、登場人物たちにとっては“日常的”な「やりとり」がある。
それが見る人にとっては、共感にもなり微妙な違和感にもなる。
それが何だか面白かったり、愛おしかったりすることで、笑いが起こるのだと思います。
今回、私の役は前半には「登場人物同士のやりとり」で構成され、後半はどちらかと言えば「奇抜な言動」で押し通す、というような役でした。
実は、初日の第一回目の公演では上記にある「笑いが起こる場面」についての理解が不足しており、前半はいいのですが、後半になるほどに「他の演者さんの演技はウケているが自分の演技では笑いが起こらない!」と焦ってしまっていました。
でもこれは考えが違っていたのです。
場面ごとの自分の役割を理解すればよかっただけの話でした。
今回私のいただいた「沼原」という役は、登場人物の中で最も奇抜でおかしな人物です。
そしてその奇抜さは、物語の中で非常に重要なファクターなのです。
ですので物語の後半では、私は徹底して奇抜な人物を描けばよかったのです。
それが、私に与えられた役割であり、チームプレーを体現することになるのです。
そのことに気づくことができ、以降の公演では自分の中では完全に歯車が噛み合ったような気がしました。
非常に充実した演技をすることができたと思っています。
今回の公演で印象的だったのは、キャストの方々の年齢層も幅広く、稽古もチームに分かれての稽古がメインだったのにもかかわらず、チームワークが素晴らしかったことです。
公演を重ねるにつれ、全員がお互いへの自信と信頼を感じていたのが、ハッキリとわかりました。
とてもいい経験をさせてもらったと思っています。
このような機会を頂けたことを本当に感謝しています。
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