久米靖

2021.06.18

不滅の名作アーカイブ③ 『砂の器』(1975年)

みなさん、おはようございます!
Cast Power Next所属の久米靖です。

名作映画やドラマの感想を綴るコーナー、第3回です。

今日6月18日は名優・加藤剛さんの命日です。
その加藤剛さんが主人公を演じ、日本映画史に燦然と輝く名作となっているのが『砂の器』(1975年公開)。

原作は松本清張氏。監督は数々の名作を世に送り出した野村芳太郎氏。

映画化が企画されてから完成まで14年もの歳月を要した大作は、黒澤明監督が一蹴したというその型破りな脚本と構成を見事に具現化し、大ヒットとなりました。

物語は、蒲田の電車操車場内で男性の殺害死体が発見されるところから始まります。

迷宮入りと思われた殺人事件を捜査する二人の刑事が、東奔西走・長い探索の末その犯人に肉薄した時、今まさに栄光の階段を上り詰めようとする天才音楽家の数奇な生い立ちと秘密に突き当たるのです。

暗い宿命を背負った音楽家・和賀英良(わがえいりょう)を演じるのが、加藤剛さん。
時代劇『大岡越前』での凛とした爽やかな印象が強いですが、この映画では整った美貌に影を宿し、まさにはまり役だと思います。

犯人を追い詰める今西刑事役は丹波哲郎さん、その部下の吉村刑事は森田健作さん(ついこの前までの千葉県知事)。

そしてヒロインは、我らがCast Power Nextのグループ会社のプロダクション部門にて提携マネジメントを行なっている女優、島田陽子さんです。

この映画を初めて観たのは数年前。
そのあまりの感動に、「何でもっと早く観なかったんだろう」と後悔しました。

原作者の松本清張氏をして「原作を凌駕した」と言わしめたこの作品のクライマックス40分間の高揚感はとても言葉では言い表せません。

犯人逮捕に向けて最後の捜査会議が始まると同時に、コンサート会場では和賀英良が指揮するピアノ協奏曲「宿命」の演奏が始まります。

彼の背負ったあまりにも悲しい宿命から生まれた曲「宿命」。

その演奏はラストまで40分間途切れることなく続き、捜査会議で今西刑事が説明する犯人の動機、そして和賀英良と父との長くつらい放浪の旅が描写されるのです。

和賀の回想シーンは、松本清張氏の原作はたった一行しか記載がなく、また劇中ではセリフは殆どありません。
放浪の旅を続ける親子の絆が、ただ美しく厳しい日本の四季の風景と「宿命」のドラマチックな音楽の中で描かれています。

海外の批評家の中には、「ミステリーを超えた、“ミステリー・オペラ”だ」と言う方もいます。

未見の方にはぜひ観ていただきたい傑作です。

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