久米靖

2021.07.08

二十四節気と昔話② 小暑・『船幽霊』

みなさん、おはようございます!
Cast Power Next所属の久米靖です。

二十四節気と昔話、2回目は、「小暑」(7月7日~7月21日)。

「小暑」には、暑さがどんどん強くなっていくという意味があります。
梅雨の終わる頃で、強い日差しと共に気温が一気に上がる時期。衣食住のあらゆるものが夏向きのものに変わります。

さて、この「小暑」の時期が舞台となっている昔話の一つが『船幽霊(ふなゆうれい)』。
お盆の日に焚く「迎え火」がテーマになっている作品です。

「ちょっと待って、お盆って8月半ばじゃないの?」と思われた方もいるかもしれませんが、これは太陰太陽暦を使った旧暦の時代の話。
現在は太陽暦を使っていますが、旧暦ではお盆は7月15日頃なのですね。

■『船幽霊』あらすじ
むかしむかし、ある漁師町ではお盆の日に「迎え火」を焚いて死んだ人の霊を迎える、という風習があった。

さらにこの日は、海で亡くなった人の霊が「船幽霊」となって船を沈めるので、決して漁に出てはいけないとも言われていた。

ある時、威勢のいい漁師の親方が村人たちが止めるのも聞かず、漁師たちを率いて漁に出てしまった。
沖に出ると面白いように魚が取れ、親方は上機嫌だった。

ところが、次第に雲行きがあやしくなり、水平線の向こうから不気味な船が近づいてきた。

不気味な船からは青白い火の玉がふわふわと舞い、やがて「柄杓(ひしゃく)をくれえ・・・、柄杓をくれえ・・・」とつぶやきながら漁師の船に押し寄せてきた。

もし柄杓を渡すと、船幽霊たちはその柄杓で海水をすくって船に流し込み、船を沈めてしまう。

その頃浜辺では、焚いていた迎え火が次々に夜空で赤い炎となって沖へ飛んでいくという、不思議な出来事が起きていた。

赤い炎の群れは漁師たちの船のすぐ近くまでやって来て、船幽霊たちに話しかけた。
「海の亡者どもよ~、静まれ~。俺たちも海で働き死んでいった幽霊じゃぞ~、同じ仲間じゃないか、悪さをするな~、消えろ~、消えろ~」。

すると、船幽霊たちは赤い炎の言葉を聞き入れたのか、少しずつ消えていった。
不気味な船が立ち去ったのを見届けた赤い炎の群れも、浜へ引き返していった。

静かになった沖に残された漁師の船では、親方が「柄杓が欲しい・・・、柄杓が欲しい・・・」とうわ言のように口走っていた・・・。

 
この作品は『まんが日本昔ばなし』でも放送されました。
俳優の市原悦子さんと常田富士男さんのお二人が、一人で何役もの登場人物の声を使い分けながら独特の語りにて紹介する番組です。

この『船幽霊』でのお二人の演技は圧巻で、夏の夜に観ると鳥肌が立つほど怖い(((^_^;)。

ボクたちも幽霊やお化けを演じることもあるかもしれませんが、時代背景やいきさつを理解した上で役に向かうと、演技にも深みが出るかもしれませんね。

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